製作を考慮した溶接交差部スカーラップ構造の1考察

1.はじめに

 近年,橋梁製作コストの低減が盛んに議論され,合理化・省力化あるいはロボット化に関する構造が提案されている.この中で,スカラップに関しては,形状の変更,スカラップの省略(スニップカット),各公団公社ごと異なるスカラップ形状の統一などの提案がなされている.また,ロボット施工が容易となるような,スカラップ形状の提案なども行われている.スカラップの問題としては,交通量の増加および重荷積載車両の通行により道路橋において疲労亀裂が発生し,その多くがスカラップ廻し溶接の止端部から発生していることが挙げられる.また,ロボット化の妨げの要因となっているなどの問題もある.

 ところで,なぜスカラップが必要とされてきたのかを考えても,はっきりとした根拠が見あたらず,観念的に溶接線の交差を避けるため,あるいは溶接施工上からスカラップを設けているものと思われる.まず,溶接線の交差を避ける必要性を考えると,交差部の溶接品質の問題,あるいは溶接熱の重畳による鋼材の材質変化などが挙げられる.これらについては,クレータが重なると言った問題があるものの,以前と比べて溶接技術,溶接材料および鋼材の品質が格段に向上しており,この問題が当てはまるかどうか疑問な所もある.次に施工面で考える.スカラップは主部材の溶接ビードを断続させないために,2次部材に設ける場合が多い.一般的な構造として,35Rのスカラップ形状のものが用いられているが,施工法によって(例えばロボットを使用するか否か,あるいは部材の組立手順など),施工性の良否,あるいは作業効率が大きく異なる.このことは,スカラップの適用箇所により,その形状を検討する必要があることを示している.

 これまで,合理化に向けた提案は数々行われているが,具体的に検討された報告としては,箱桁内横リブの圧縮側縦リブ貫通部スカラップを引張側と同様,非溶接構造とする検討は行われているが ,それ以外あまり目にしない.次に,疲労面では,例えば鋼床版の横リブ部のトラフリブ貫通部やI桁の横桁取合部で,スカラップ廻し溶接部から疲労亀裂が多く発生しており,疲労強度の改善を目的とした報告は比較的多い.しかし,スカラップ構造を,施工性,作業効率および疲労を総合的に論じた報告はない.

 本報告では,上記の検討結果や各公団公社の標準図集で示されているスカラップ部の詳細などを参考に,道路橋のスカラップ形状を施工性,作業効率,および疲労などから総合的に検討し,各適用箇所で望まれるスカラップ構造の提案を行う.さらに,ダイヤフラムを対象にFEM解析を実施して提案した構造の妥当性を検証し,最後にスカラップ構造のあり方について述べる.