プレートガーダー橋主桁腹板の初期たわみ座屈耐荷力に及ぼす影響

現在、鋼橋において桁の初期たわみは桁高の 1/250 でなければならないことが道路橋示方書で定められている。初期不整の規定は日本だけでなく、多くの国で桁高の1/250以下と定められているが、この根拠は明確でないとの指摘がなされてきた。

過去においても桁の初期不整に関する実験的、理論的、数値解析的検討は行われてきた。

実験的検討に関しては森脇らによるものがある。森脇らは初期不整を持つプレートガーダーに対し、せん断、純曲げを加える実験を行った。その結果せん断が支配的な桁に関して現行の規定はかなり安全側にあると述べている。また、小松は曲げに関しても現行の規定は若干安全側にあると述べている。これと同様に、藤野は曲げとせん断の組み合わせを受ける桁に対しても、現行の規定は緩和しうることを述べ、森脇らの結果から組み合わせ座屈強度を与えている。

理論的検討の例としては。純曲げを受けるプレートガーダー腹板に対して、初期不整が耐荷力に及ぼす影響を検討した例があるが、せん断に関して初期不整の影響を検討した例はほとんど見られない。

数値的解析検討に関してはせん断を受ける桁の解析が行われている。この中でも初期不整に関するものとして、奈良らは桁高の1/150までの量を桁の初期たわみ量として、初期たわみ分布に関して、数種類のモードで座屈耐荷力の変化を有限要素法により調べているが、いずれの場合においても耐荷力に差は少ないと述べている。一方で、曲げのみ、曲げおよびせん断の組み合わせ荷重に対する数値的解析検討例はそれほど見られない。

設計製作の合理化、橋梁架設事業の低価格化が望まれており、不要な、あるいは過剰な制約は避けるべきであり、そのような観点から、本研究においては、初期たわみ量が座屈強度へ及ぼす影響を検討することを目的としている。曲げ、せん断および組み合わせ荷重を考慮することができ、また、所望のたわみを与えることができるようにするには数値的検討が有利である。また、座屈後の挙動、塑性域の広がりなどを検討するにも数値解析が有効である。本研究では有限要素法による材料・幾何学的非線形解析に基づいた検討を行っているが、曲げ、せん断およびそれらの組み合わせを受けるプレートガーダー腹板を対象とする点が既往の研究とは異なっている。さらに本研究では特に上記の既往の研究では考慮されていなかった、より大きな初期たわみを与え、座屈強度が大きく低下するかを検討している。溶接残留応力の影響も当然検討すべきであるが、初期たわみの影響と明確に区別するために、本論文においてはまずこれを考慮せずに検討を行っている。