超長大橋

 


 

日本での代表的な長大橋プロジェクトである本州四国連絡橋のプロジェクトは1970年に本州四国連絡橋公団が設立され順調に進み,1999年に尾道・今治ルート(しまなみ海道)の開通をもって完結した.このプロジェクトを通して日本は長大橋の分野で世界のトップクラスの地位を占めることになった.また長大橋の橋梁形式として吊橋が主流となり,その中でも明石海峡大橋は世界一の支間長を誇る(図1,2).20世紀の長大橋プロジェクトはこれで1段落するわけであるが,これからの日本において明石海峡大橋を超える超長大橋の計画は以下のもの(図3)があり,今後の調査,計画,技術的な課題を解決するための研究をさらに進める必要がある.

 

 

 


 

 

 

 


図1  長大橋の支間長の変遷

 

 

(1)  東京湾口横断(主径間2200m2300m3径間吊橋案)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


図2  明石海峡大橋               図3  将来の海峡横断プロジェクト

 

(2)伊勢湾口横断(主径間2300m程度の3径間吊橋案)

(3)紀淡海峡横断(主径間2100m2700m3径間吊橋案)

(4)豊予海峡横断(主径間3000m4径間吊橋案)

(5)津軽海峡横断(主径間3000m超級の吊橋案)

 

これらの超長大橋の上部構造における技術的検討課題を挙げると耐風設計法,耐震設計法,4径間吊橋の中間タワーの設計法等がある.また,各種構造材料や構造形式の技術開発,さらに下部構造,架設方法についても架橋地点独自の自然・環境条件を考慮して検討していく必要がある.技術的な課題の他にもこれからの長大橋において,耐久性や経済性は社会的な要請として不可欠な要素である.これらの要素を実現させる研究として,現在新素材の可能性を考え,CFRPCarbon Fiber Reinforced Plastics:炭素繊維強化プラスチック)ケーブルを用いた超長大吊橋の構造特性と経済性について,さらに安全率の低減化による超長大吊橋および長大斜張橋の終局強度特性についてなどの開発研究が進められている.

ここでそれぞれの研究について簡単に紹介する.

 

「新素材(CFRP)ケーブルを用いた超長大吊橋の構造特性と経済性」 前田部会員(東京都立大学)

鋼材の代わりにCFRPを用いることで得られる最大のメリットは単位重量が激減することである.当然CFRPは鋼材に比べ高価であるが,価格差以上にケーブルの重量が軽減されればCFRPの使用も検討する価値がある.そこで構造特性の把握のために主ケーブルの材料を鋼材とCFRPで変化させ,静的解析(死荷重,活荷重,温度の影響,風荷重)により静的特性および連成フラッター解析により動的耐風安定性について比較検討した.また鋼材よりも経済的となる適用支間について,ケーブル工費に着目し検討した.

ここで用いるCFRPの物理的特性を以下に示す.

・新素材ケーブルの長所:軽量,耐食性良,引張・疲労強度大,温度収縮の影響小,非磁性体

・新素材ケーブルの短所:高価,脆性材料,せん断強度低,導電性,紫外線による樹脂の劣化,耐熱,耐火性低,耐風安定性

本研究で得られた知見は以下の通りである.

<構造特性>

2500m超長大吊橋についても検討がされ,鉛直変位の増加,ケーブル張力の減少,比重以上のケーブル重量減少が分かった.しかし新素材ケーブルを用いることで,剛性が低下し,フラッター限界風速が大きく減少した.その対策として新素材ケーブルのケーブルステイを設置することで,鋼主ケーブルの限界風速を上回る結果を得た.

<経済性>

中央径間500m〜1500mで検討の結果,鋼線に対して単位重量当たり材料費が10倍ではサグ比に関係なく新素材ケーブルが経済的となったが,20倍では極めて低塔(サグ比1/20)の場合のみ1400m以上で経済的となった.

 

 

 

 

 


 

 

 

 


図4  経済性の比較(中間径間2,500m)

 

 

中央径間2500mの経済性については,図4のようであった.さらに,アンカレイジをはじめとする下部構造の工費を含めて考えると,経済性がより高くなることは明らかであった.

 

「安全率の低減化による長大吊形式橋梁の終局強度特性」長井副部会長(長岡技術科学大学),野上部会員(東京都立大学)

21世紀に向けて,建設事業費の縮減が大きな課題となっている中,長大吊形式橋梁(吊橋,斜張橋)は,1)材料強度品質の安定,防食性の向上,さらには高精度の製作・施工といった技術開発,2)部材ごとの安全性と構造全体系としての安全性の考慮,3)総荷重に対する活荷重の占有率の低下などの観点から,各構成要素の安全率の低減化を実現できる可能性がある.

ここでは,終局強度に着目した安全率のバランス化を図ることにより,構造系としての合理的な安全率の組み合わせを検討している.

まず,長大吊橋のモデル(図5)に対して,破断強度に対するケーブル安全率を1.42.25ケース,ハンガーを3.02.52ケース,および降伏強度に対する主塔の安全率として1.21.73ケースを設定し,満載と偏載荷重を載荷する全60ケースについて,弾塑性有限変位解析をパラメトリックに実施した.なお,主桁の安全率は1.7としている.

終局強度に着目した合理的な安全率の組みわせの選定条件として,@ハンガー,主ケーブル,主塔の順に初期降伏をすること,A最初に降伏する構成要素の初期降伏時の荷重倍率および全体系の終局強度が,明石海峡大橋の場合のそれらと同等であることを前提とした場合,本解析結果により,主塔1.5,主ケーブル1.8,ハンガー2.5の安全率の組み合わせを提案できることが明らかになった.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


  図5  3000m吊り橋                   図6  600m斜張橋

 

 

次に,斜張橋のモデル(図6)を対象にして,主桁の桁高(123m)と材質(SM400SM490Y)をパラメータとした弾塑性有限変位解析から,ケーブルの安全率の設定(1.5, 1.7, 2.0, 弾性ケーブル)が橋全体の終局挙動,強度に及ぼす影響を明らかにし,安全率の低減化の可能性を検討した.ここに,荷重条件は死荷重満載である.

その結果,

1)ケーブルの塑性化は斜張橋全体の終局強度に大きな影響を与える.その強度は桁高の影響を受けない.

2)終局時荷重倍率は,ケーブルの降伏点と最大応力の比で概略予測できる.

3)ケーブルの安全率は2.2(降伏点に対して鋼材と同じ1.7)まで低減できる.

などを明らかにした.