架設

 


 1.架 設 計 画

 

(1)概要

テキスト ボックス: 架  設  計  画鋼橋を設計図通りの品質に,工期内で安全かつ経済的

に架設するには,あらゆる方面の周到な計画が必要になる

.このためには,設計図書や現地及び周辺環境等の調査

に始まり,各種制約条件を克服できる架設工法を安全面,

経済面及び工程面から比較検討して選定し,詳細な施工

計画を作成して現場施工に望むことが必要である.もちろ

ん建設計画や設計段階から,これらのことが考慮されてい

ることが望まれる.

 橋梁は一般に完成状態に対して合理的に設計されている

ので,完成時には使用状態に対しての十分な耐荷力を有し

ているが,架設時には不完全な状態で,一時的に構造系が

変化して部材作用応力が反転したり,許容力を上回る場合

が生じる.したがって,架設時にこそ細心の注意を払って安

全性を確保し,綿密な計画を行って必要であれば設計にフィ

ードバックし,橋梁部材の補強或いは構造変更などの処置

が必要になる.

ここでは,架設工事に重要となる架設工法の選定や施工

計画書で検討すべき事項等について概説する.

 

 

(2)架設工法の選定

鋼橋の架設工法は,橋梁形式,現場の地形と架橋位置,周辺環境,交通路,架設時期などにより決まるが,工期,機械設備,安全性,周辺環境対策等によっても選定すべき工法が変わってくる.一般に単純な工法ほど経済性は高くなるが,条件によっては各種工法を組み合わせることにより工期の短縮や経済性の確保を図る.最近の橋梁形式では複合構造が増えており,構造の特殊性を生かした工法や今までに無い工法を立案する必要も出てくる.いずれにしても安全確実に施工できることが第一義となる.

架設工法の呼び名は,架設機械及び機材に着目した分類と部材の支持方法に着目した分類があり,これらを組み合わせて表現している.例えば,トラッククレーン工法とベント工法を合わせてトラッククレーンベント工法,トラベラークレーン工法と片持式工法を合わせてトラベラークレーン片持式(カンチレバー)工法などである.

工法選定方法の一助として図1に橋梁形式から採用可能な架設工法を,また,図2に地形条件から決まる工法選定フローチャートの例を示す.これらを利用していくつかの適用し得る工法を選択し比較検討する訳であるが,例えば,桁下空間が利用できベントが設置できる場合でも,ベントの高さが20mを越えるような場合は不経済になる場合があり,他工法の併用または別工法の採用が必要になる.

 

 

図1 鋼橋の構造形式と架設工法の適用性

 

 

 

社)日本橋梁建設協会 わかりやすい鋼橋の架設<平成9年3月>より引用

 

図2 架設工法選定フローチャート

 


 

 

 

(3)施工計画書の作成

決定された架設工法に合わせて詳細な計画を進めることになるが,安全及び品質を確保するための手順及び基準等を明確にする必要があり,確実に実施できる品質管理,安全管理,工程管理の方法及び架設時の安全照査計算結果等を網羅して施工計画書に記述する.図3に実施段階の施工計画書(実施計画書)に記述すべき事項を示す.

これらの計画は発注先の仕様書は元より,各種技術基準や法令,法規に則る必要があるが,特に架設工事で引用される示方書や基準類としては下記のものが上げられる.

1)道路橋示方書・同解説(道路協会)

2)鋼道路橋施工便覧(道路協会)

3)鋼構造架設設計指針(土木学会) 

4)鋼構造架設施工指針(土木学会)

5)コンクリート標準示方書(土木学会)   etc.

施工計画書を作成するに当たっては,労働基準監督署に提出する建設工事届,クレーン設置届,建設物設置届,セーフティアセスメントなどを考慮して作成する.

実際の工事開始段階になると予期しなかった制約条件等が生じ,計画を変更せざるを得ない場合も少なくない.計画変更を行う場合は,関連工事の状況を良く理解した上で,より一層の綿密な打ち合わせ及び各方面との協議を経て,慎重に対応する必要がある.

 

 


 

架設計画書(実施段階)の記載事項

 

1.総則(適用範囲,特記事項,適用示方書・基準類)

2.工事概要

1)工事件名,路線名          6)施工数量及び施工範囲

2)工事場所               7)特記事項,工事条件等

3)工期                  8)発注者

4)橋梁形式               9)施工者

5)橋長,支間,幅員         10)橋梁一般図

3.現場組織:施工体制組織図

4.緊急時の連絡体制

5.仮設備計画

仮設建物,電力設備,給排水設備,工事用道路,作業ヤード仮置場所などの計画

6.主要材料

現場で実際に使用する,沓座モルタル,ハイテンボルト,塗料,コンクリートなど.

7.主要機械・機材

現場で実際に使用する機械,機材の種類,能力,寸法,数量など.

8.施工計画

1)    施工概要(含フローチャート説明) 6)継手部施工要領(ボルト,溶接)

2)    測量要領             7)現場塗装施工要領

3)    架設要領図,段階施工図   8)床版施工要領

4)    無収縮モルタル施工要領     9)足場防護工施工要領

5)    沓据付要領

9.架設時の計算

1)    橋梁本体の安定,部材の安全性の照査

2)    架設中の各段階の変形,たわみの計算

3)    主要仮設構造物,機材,安全設備の計算

4)    設置するクレーン等の計算

10.安全衛生管理

1)    安全衛生管理体制,    2)組織図

3)    作業所の安全衛生管理と要領

4)    事故防止の要点

5)    保安設備,交通規制設備,第三者立入禁止措置など

11.施工管理計画

1)    出来形管理

2)    品質管理方法及びチェックシート等

3)    写真管理

12.対外協議関係

13.工事工程表

(橋梁と基礎 88.4 より引用)

 

図3 実施計画書の記載事項

以上.

 

参考文献

1.(社)日本道路協会 鋼道路橋施工便覧<昭和60年2月>

2.高岡,秡川 架設工法の選定と架設計画<橋梁と基礎 88-4>

3.(社)日本橋梁建設協会 わかりやすい鋼橋の架設<平成9年3月>

4.(株)建設産業調査会 最新橋梁設計・施工ハンドブック<平成2年1月>

 

 

 

 

2.現場添接(HTB,溶接)の施工方法と品質管理

  鋼橋において工場製作,輸送,架設などの条件により部材をある程度の大きさ,重さに分割しなければならない.その為,部材を現場にて連結する必要があり,その方法としてはボルト接合,溶接接合の2種類がある.

 

 

(1)ボルト接合

 ボルト接合には摩擦接合,支圧接合,引張接合があるが,最近ではほとんどの場合,摩擦接合が採用されている.摩擦接合に使用する高力ボルト(HTB)の種類としては六角高力ボルト(JIS B 1186)とトルシア形高力ボルト(日本道路協会規定)がある.六角高力ボルトはトルクレンチにより導入トルクを計測しなければならないが,トルシア形高力ボルトはボルトの先端にあるピンテールが締め付けの反力を受けるため,そのピンテールの破断により締め付けトルクの導入確認が出来る.この管理の良さから最近では主にトルシア形高力ボルトが使用されている.

 摩擦接合の施工方法については,トルク法,ナット回転法,耐力点法の3種類があり,この中で最も一般的な方法はトルク法である.トルク法は他の2種類と異なり,弾性域の軸力で使用される.この方法は,あらかじめナットを締め付けるトルクと導入ボルト軸力との関係を調べておき,そのトルクを管理しながら施工することにより,定められたボルト軸力を得る方法である.

以下に,摩擦接合トルシア形高力ボルトの締め付けについて,写真を付けて説明する.締め付けは,2度締めで行う.1度に締め付けると最初に締め付けたボルトが緩む可能性がある為,まず導入軸力の60パーセント程度で予備締め(写真−1)を行う.その後で,本締めの異常を容易に確認出来るようにするためマーキング(写真−2,3)をし,導入軸力100パーセントで本締め(写真−4)を行う.管理はピンテールの破断を目視により全数確認すると共に,締め忘れ,共回りがないかをマーキングにより確認する.異常のあるボルトは,ナットとセットで取り替えて締め直す.

 

 

写真1

 

写真2

 

写真3

 

 

写真4

 

 

(2)溶接接合

 溶接接合は工期が長くなる短所もあるが,美観上優れている,鋼重が軽くてすむ等の利点がある為,現場接合の主要な工法となってきている.主な適用箇所としては,鋼床版デッキプレート,橋脚,主塔等であるが,最近ではT桁少数主桁橋,箱桁橋にも採用されるようになってきており,今後はさらに増えることが予想される.  

溶接施工上の管理項目としては,開先形状の管理,開先面の水分や油の除去,溶接材料の乾燥状態の確保,気温管理,湿度管理,防風対策等がある.これらの条件が揃った上で溶接施工を行う.

以下の写真は鋼床版デッキプレートの溶接を例にしたものである.

 

(写真−5)はサブマージアーク溶接の溶接機である.これをレールの上に走らせて(写真−6,7)の様に溶接を行う.溶接完了後は,表面と内部の検査を行う.表面は目視により外観検査を行う.細微な表面割れの検出には磁粉探傷試験(MT)や浸透探傷試験(PT)を行う場合もある.内部については放射線透過試験(RT)(写真−8)にて行う.この際,放射線を浴びないように人を近づけない配慮が必要である.板厚が50ミリ以上の場合等,RTによる検出が難しい場合は,超音波探傷法(UT)にて検査を行う.検査結果が不合格となった場合は,ガウジングで溶接部を削除し,再溶接,再検査を行う.

 

 

 

 

写真6

写真7

写真8

 

<参考文献>

トルシア形高力ボルト設計・施工ガイドブック  (社)日本橋梁建設協会

わかりやすい鋼橋の架設   (社)日本橋梁建設協会

 

 

3.床 版 の 施 工

 

(1)床版の種類

鋼橋の床版には,図−1,図−2 に示すように(1)コンクリート系床版,(2)合成床版,(3)鋼床版がある.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


図−1  床版の種類

 

 

 

図−2  各種床版の構造

 

(2)床版施工の流れ

 鋼橋の床版として最も一般的な「RC床版」の現場打ち施工についてその概要を以下に記述する.

  これは鋼桁の架設後,現場において型枠支保工及び鉄筋を組立て,さらにコンクリートの打設を行い,桁上の橋面構造となる床版及び地覆を形成するものである.

 

図−3  橋面構造の名称

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


図−4 床版施工のフローチャート

 

 

 (3)型枠支保工の組立

 型枠支保工の工法には,桁の全長に型枠を設置する「固定型枠工法」の他に,鋼製型枠を転用しながら部分的にコンクリートの打設を行い順次橋軸方向に移動させていく「移動型枠工法」がある.

1)固定型枠工法

  平面線形が複雑な床版や施工延長が80m以下の床版に適用例が多く見られる.

 型枠支保工は鉄筋コンクリート重量の他に作業荷重を考慮して計画し,鋼桁架設後の施工高さの調整はハンチ部で行う.

 モルタルが漏れない水密な型枠とし,表面に目違いや隙間ができないように平滑に仕上げる.

 

 

図−5  固定型枠支保工の例

 

(2)移動型枠工法

 型枠を移動させながら転用していくためサイクル工程となり固定型枠と比較して工期短縮が図れる.しかし,支保工設備が大規模となり施工延長が長いものでないと経済的でなく,型枠の走行性から曲線桁などには適応しにくい面がある.

 

 

写真−1    移動型枠                     写真−2    移動型枠

 

 

 

 

図−6  移動型枠支保工の例


4) 鉄筋の組立

 型枠内を清掃した後,鉄筋と型枠のせき板との間にスペーサーを設置して規定のかぶりを確保する.鉄筋を正確に配置し,組立鉄筋等を用いて打設時に動かないように堅固に組み立てる.

 また,鉄筋の継手位置は同一断面に集中しないように相互にずらすことを原則とする.

床版に排水桝を設ける箇所は,開口部に補強鉄筋を配置した後,あらかじめ排水桝を設置し,桝内にコンクリートが入らないように蓋をしておく.

 

図−7 床版の配筋

 


5)コンクリートの打設及び養生

1)打設

   コンクリートの打設に際しては,橋梁形式,床版構造,1日当りの打設可能数量を十分考慮して打設区間や順序を決める必要がある.

主桁構造に局部的な変形を生じないように変形量を最小限に抑えるとともに,連続桁の場合や打設数量が多く1回で打設することができない場合には,打設後のコンクリートに過大な引張応力が発生しないように打設順序を決定する.

コンクリートの打込みはほとんどの場合ポンプ施工が行われているが,長距離配管や暑中コンクリートの際は材料分離やスランプの低下等に留意しながら打設する必要がある.また,コンクリートの打設時に,型枠上の1箇所に多量にコンクリートを山積みしないようにし,型枠への荷重が偏載しないように注意する.

 

写真-3  床版コンクリートの打設

 

a)単純桁橋の場合

単純桁の場合,固定支承側から可動支承側に片押し打設する.

 

 

単純桁の打設例

 

 

 

b)三径間連続桁橋の場合

中間支点付近Bのように負の曲げモーメントの生ずる箇所は次のブロック@Aを打設する場合,コンクリートに引き張り力が働くので,このような箇所は後に打設する.

 

3径間連続桁の打設例

 

図−8 床版の打設例

 

2)締固め

   鉄筋の周囲や型枠のすみずみまでコンクリートが行き渡るように,打設中は棒状バイブレーターを用いて締固めを入念に行う.

   特に鉄筋が密に配筋されている箇所は,ブリーデイングにより鉄筋の下端に生じる空隙や沈下ひびわれ等を防ぐために,十分かつ均一に締固めを行うことが必要である.

 

 

図−9 バイブレーターのかけ方

 

3)表面仕上げ

   コンクリートの締固め後,床版厚さを検測棒で確認しながら速やかに所定高さまで敷き均し,木ごて,タンパーなどで平坦に荒仕上げを行う.その後ブリーディング水が出てきたら金ごて,羽子板,フロートなどで表面仕上げを行う.

 

 

図−10 検測棒の例

 

4)打継目の施工

   打継目は構造上の弱点になりやすいためできるだけ少なくするとともに,死荷重応力の小さい位置に設けることを原則とし,その施工に際しては,強度,水密性,外観等をそこなわないように入念な施工を行う必要がある.

打継面のレイタンスや浮いた骨材を取り除き,チッピング等で打継面表面の目荒らしを行い十分吸水させた後,セメントペースト,モルタル,湿潤面用樹脂プライマー等を塗布して付着性能を向上させ,新旧コンクリートの一体化が図れるようにする.

 

 

図−11 打継目の施工例

 

5)養生

表面のブリーディング水が乾いた後,養生マットを敷設して散水し湿潤状態に保つとともに,直射日光や風等で水分が蒸発しないようにシートや上屋で覆って規定の養生期間中は定期的に給水を行う.

特に,暑中コンクリートの場合は打設後24時間は乾燥させないようすること,寒中コンクリートの場合は凍結を防止するために保温あるいは給熱養生を行うとともに急激な温度上昇・下降をおこさないようにすることが必要となる.

    また,養生期間中は振動,衝撃及び荷重が加わらないように十分注意する必要がある.

 

 

図−12 寒中養生の施工例


6)橋面防水工

 

          耐久性に大きく影響する浸透水の防止

          透水性舗装の普及への対応

 

 


PC床版

 

コンクリート系床版にプレストレス導入してプレストレストコンクリート床版とするの理由としては,ひびわれの発生を防止して疲労耐久性を向上するとともに,床版の桁支持間隔を広げ少数主桁化することができる.                   

 

 


少数桁橋梁のPC床版における施工上の留意点

 

特徴

    床版支間が広い(L=6〜7m)

 

 

(参考文献)

1.     社団法人 日本道路協会 : 鋼橋の疲労,平成9年5月

2.     (社)日本鋼構造協会編 : 鋼構造物の疲労設計指針・同解説 技報堂,1993.3

3.     名取 暢 鋼道路橋の疲労設計―疲労設計の導入による設計・構造イメージの変化― 第2回鋼構造と端に関するシンポジウム論文報告集.(社)土木学会,1999.8.31