製作

 


T.製作手順

 

 鋼橋はいうまでもなくミルメーカーで製造される鋼板を加工して製作される.計画・設計者は鋼材という材料を念頭に,発注者の要求品質,性能を満たす橋をイメージする訳ですが,製作は初めて構造を3次元に具現化するので,製作から決まる構造詳細は少なくない.しかし製作上から決まる構造詳細について詳しい方は少ないと思われる.以下は製作に携わっていない方に多少なりとも理解していただくために作成した.

 

1.部材の大きさ

(1)製作能力

 鋼橋は多くの設備・人を抱えた工場で作られ,当然ながら様々な設備能力の適用検討の必要がある.製作が可能かどうかは,設計図を描く前に必ず考慮する事項である.また,最近では各工場独自の近代化設備の諸能力も視野に入れている.その一例を列記する.

1)部材重量(クレーン能力)

2)工場建家の搬出間口(高さ,幅,長さ)

3)工場建家高さ(反転時のクレーン巻き代で部材の大きさに制約)

4)各種設備の定盤幅,長さ(プレス機,パネル溶接機等)

5)近代化設備活用上の制約(縦リブ高さ,間隔など溶接機,プレス幅等)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


<フランジパネルのプレス矯正>

 

(2)板の運搬可能重量

殆どの工場で板の最大運搬重量は20tである.これはミルメーカーの製造・運搬重量から決まる.幅や長さが大きくなると板がたわみ,運搬の安全上からも要注意になる.

 

2.板継

  設計図に示される板継位置は製作を進める上でいくつかの制約になる場合がある.

(1)他溶接線との干渉

 

(2)板継の合わせ面

内逃げ,外逃げ,中央合わせかで製作上のやり易さが異なる.製作上から言えば補剛材や縦リブなどの取付面(マーキン面)になる外逃げの方が作り易い.

 

                          <取付面側>

 

 

 


         <内逃げ>

                              <外逃げ>         <中央合わせ>

 

(3)貫通部材

   主桁と横桁が交差するような場合の基本は薄い板を先に板継する.よく横梁剛結構造で主桁WEBより横梁WEBが厚い場合があり,横梁を主桁WEBで断続すると,横梁の溶接時に拘束力の大きい板厚の厚い板継溶接を後にすることになり,薄い方の部材の思わぬ変形をもたらすことがある.

 

 


 

 

3.組立

 (1)形状保持

      組立で大切なことは形状をいかに保持するかということである.箱桁の端部近傍には設計上の必要性が

薄くても,なるべくダイヤフラムがある方が望ましい.

 

(2)精度保持

           組立精度が必要な場合,応力計算からのみで必要板厚を決めるのではなく,ある程度の剛性を確保すべきである.一例を上げると吊橋,斜張橋タワーのブロック間メタルタッチを確保するために部材端部の平行度を1万分の1以下にする規定がある.これを実現する上で,部材板厚の厚い方が精度を出しやすくなる.材質も重要ですが剛性を確保することは構造物の耐久性,製作上の諸課題解決上,侮れない.

 

(3)小部材重量

組立工程はなかなか近代化が進まない.FLG,WEBなどはクレーンで吊りますが小部材は人力で配材,組立することが多く,持てることがネックである.20s以下,重くても30s(二人で持つ)が目安である.ケーブル定着部座金が大変重い場合は,2分割にしたり,装着時にチェーンブロックを付けて巻き上げられる吊りピースまたはスカラップ孔が必要である.

 

4.溶接

(1)溶接できるか?

   設計強度を確保する上で,健全な溶接ができることは必要不可欠である.よくある溶接し辛いケースを列記する.

1)橋脚基部のハカマ部やアンカーフレームの補剛リブ

 (アンカーボルト径との兼ね合いで狭くなる)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


        <補剛リブ幅が広いと矢印の溶接が困難になる>

 

2)橋脚梁の支点上補剛材

 (隅角のWEB,補剛リブ,支点上ダイヤフラムなどに囲まれて狭い)

3)斜張橋やニールセンローゼ桁のケーブル定着部

4)アーチ部材や橋脚の隅角部

5)断面の小さなトラス弦材

 

   上記の例に共通することは,溶接者が溶接個所に容易にたどり着けないことです.溶接する場合,溶接線を目で確認できることが必要で,そのためには覗き込んでヘルメットが入る必要がある.場合により作業孔も必要である.

 

(2)換気できるか?

        塗装作業にも共通するが,溶接作業中の換気は作業者の安全上不可欠で,閉所には必ず換気孔,マン

      ール孔が必要である.

 

(3)どうやって反転するか?

溶接を下向きで行うために,重心の偏ったブロックを反転する作業は危険な作業である.板が薄い場合,反転時に部材を曲げる可能性もあり,変わった形状のブロックは重心振り分け位置に裏側補強等,吊りピース取り付けを考慮した設計が望まれる.

 

5.仮組

   仮組に際しては架設方法,架設順序等の現地条件を理解しておく必要があります.

(1)搭載(架設)可能か?

よく箱桁やアーチの床組で主桁搭載後,横桁,縦桁を搭載する時に,水平材と干渉して搭載できない場合がある.また,現地の架設順を考慮しないと仮組時に搭載できても現地でできないことがあり得る.

 

(2)ボルトが締められるか,ドリフトピンが打てるか?

通常ない補強などを考えた場合,それが邪魔して重要な箇所でボルトが締められなかったり,ドリフトピンが打てない場合が生じることがある.

 

(3)架設について

架設方法によって製作の仕方が変わる場合がある.製作上から決まる構造詳細ということでは直接的ではないが,いくつかの例を上げる.

1)鋼床版後架設(製作キャンバーが異なる)

2)閉合部材の仕上げ長さ調整

3)アーチ閉合時の水平力導入によるX軸方向キャンバー

4)取り合い困難時の拡大孔適用

 

6.その他

(1)検査,塗装等

閉所や密閉構造の場合,予め何らかの工程上の対処が必要となる.先行してそれらの作業ができない場合,検査孔等がいる時もある.

 

 

U.製作の自動化

 

1.はじめに

橋梁製作は,多品種少量生産であり,電気・電子あるいは自動車産業のように少品種大量生産の業種と比較すると,自動化・ロボット化が遅れている.しかし,溶接作業においては1980年代後半から各ファブリケーターで検討され始め,部分的な使い方で自動機およびロボットが導入されている.一般的な橋梁を大きく分けると,I桁と箱桁に分かれるが,I桁のように開断面では,ガセットなどの小物の取り付けといった溶接は,手作業でおこなっているが,比較的ロボット化が進んでいる.一方,箱桁では,パネル製作においては自動機やロボットが適用されているが,箱桁内の溶接は人手によって行われており,ロボット化の課題となっている.ここでは,箱桁の製作手順について述べ,当研究会におけるロボット化の課題に対する取り組みを紹介する.

 

2.箱桁製作手順

箱桁の製作方法には,総組み工法とパネル工法の2種類の組立方法があり,多くのファブリケーターで,製作効率などからパネル工法が広く採用されている.図1にパネル工法における箱桁製作手順1)を示す.

図1 パネル工法による製作手順

 

  部材の小組として,ダイヤフラム開口部の補強材の取付け(1工程)では,主にCO2で行われるケースが多い.横リブの小組(2工程)では,写真1に示すように横リブのフランジとウエブの溶接を小型部材組立溶接装置で行う場合などがある.

 

写真1 小型部材組立溶接装置(横リブの組立)

 

ウエブのパネル製作(3工程)では,多関節型のロボットや,写真2に示すように2電極門型溶接ロボットなどで,垂直・水平補剛材の取り付け溶接をNC制御で行っている.これらのロボットは,溶接始終端検知機,アークセンサーなどの機能により無監視で溶接が可能である.フランジのパネル製作(4工程)では,写真3に示すように多電極の自動溶接機で行うケースが多い.また,この作業の前工程で,自動縦リブ組立装置,また後工程においても自動パネル矯正装置などが適用されている.以上のように,箱組を行う前段階のパネル製作および部材の小組(横リブのみ)で全溶接線長の約60%が行われており,その際,自動機あるいはロボットが使用され,開断面における自動化・ロボット化の技術は,現時点において飛躍的に進歩している.

 

 

写真2 2電極門型溶接ロボット(補剛材の取付け)

 

 

写真3 8電極自動溶接機(縦リブの取付け)

 

箱組時(7工程)での溶接は外面と内面があり,外面の主桁フランジとウエブの溶接は,簡易型すみ肉自動溶接機で行うケースもあるが,箱桁内面での溶接作業は溶接延長では全体の約30%程度であるが,人手によって行われておりロボット化の課題となっている.

 

3.ロボット化の課題

箱桁内溶接は,最も劣悪な溶接作業環境であり,自動化・ロボット化が望まれているが,人手により行われているのが現状である.当研究会ロボット研究部会では,箱桁内溶接のロボット化に関する研究2),3)を行った.この報告では,図2に示すように,マニピュレータ(ロボットの自動搬送機)との組み合わせによる箱桁内ロボット施工法を提案した.そして,提案した施工法で現在の標準的な構造に対し,3次元CADで箱桁内溶接をシミュレーション(図3)した結果,部材との干渉によりロボット適用率が33%と低い結果となった.また,箱桁内溶接作業時間を従来の製作方法と比較しても,ロボットを適用した場合,溶接残しの処理時間も含めると従来の約2倍となり,現状ではロボット化のメリットはほとんどでないと言う報告を行っている.そこで,この報告では,ロボット化を拡大させる構造詳細の提案や,要求されるロボットのハード・ソフトの改良点などを明確にした.

図2 箱桁内溶接の施工法

 

 

図3 3次元CADによる箱桁内溶接のシミュレーション

 

箱桁に限らずI桁および鋼床版のおいても同じであるが,ロボット化の妨げの1つの要因として,スカラップ構造が挙げられる.また,スカラップの廻し溶接部は,狭隘な場所での施工となり,適切な溶接品質が得られない場合もあり,棒グラインダーで仕上げを行うケースもある.これらの問題に対応するため,当研究会施工部会5),6)では作業効率,施工性および疲労強度を考慮したスカラップ構造の提案を行っている.また,ロボット化し易いスカラップ構造についても言及している.

 

参考文献)

1)南 邦明,押山和徳:橋梁・鉄骨製作における省力化と今後の課題,溶接技術,Vol46,pp94〜98,1998.12

2)鋼橋技術研究会:ロボット研究部会報告書,1997.6

3)南 邦明,成宮隆雄,阿部英彦:箱桁内溶接のロボット化に関する研究,JSSC鋼構造論文集,pp93〜106,1997.9

4)鋼橋技術研究会:施工部会報告書2,1998.12

5)南 邦明,森 猛,竹村昌徳:製作を考慮した溶接交差部スカラップ構造の1考察,JSSC鋼構造論文集,pp1〜16,1999.3

 

V.仮組立

 

1.はじめに

鋼橋の出来形確認方法は,工場のヤードで仮組立によるのが一般的であり,この作業は,工場製作における作業の10〜15%程度を占めている.写真−1に仮組み状況を示す.

 

写真1 仮組み状況

 

 近年,I桁や箱桁については,コスト削減を目的に仮組立を省略するケースが増えてきた.仮組立検査省略1)は,道路橋に規定されている工場での仮組立精度を省略し,従来これらを確認するために行っていた検査をも省略し,現場架設後の出来形精度を確認することである.この方法として,以下の3つの手法で行うことを原則としており,請負者が精度管理手法を任意に決定して施工をすることとなる.

 

(1)部材計測

部材完成時にその単品形状が,所定の精度に納まっていることを,寸法計測により確認することで,精度を管理する.

 

(2)部分仮組立

ある一部を仮組立することで,部分的に組立精度を確認し,それ以外を(1)の手法と併用

して,精度管理する.

 

(3)シミユレーション仮組立(数値仮組)

各部材単品を3次元計測して,コンピューターシミユレーションにより,机上で出来形

の確認を行い仮組立を代替する方法である.

 

以下に,シミユレーション仮組立の1例2)を示す.

 

2.シミユレーション仮組立の説明

シミユレーション仮組立は,製作が完了した個々の部材の形状寸法を,ボルト位置や材端などに取り付けたターゲットを,光波による3次元計測器や高精度のCCDカメラを使用して,各部材に誤作がないことを確認したあと,設計座標データを基準にコンピュータで組立形状をシミュレーションすることによって,製品の出来形を検査するシステムである.図1にシミユレーション仮組立を適用した場合の製作フローを示す.

 

図1 数値仮組立を適用した場合の製作フロー

 

部材の3次元の設計座標値は,製作情報を作成しているNC原寸システムのデータから作成する.製作の完了した部材は直ちに部材計測を行い,設計寸法と比較して部材精度を確認する.その後,コンピュータで仮組立形状をシミュレートして仮組立の検査を行う.

 部材計測のシステムとしてCCDカメラを用いた場合では,写真測量法を利用して,部材のボルト孔位置や格点位置などを精度良く計測するシステムである.図2には計測装置の配置を,写真2には計測状況を示す.写真に示すように軌道上の台車で部材を移動させ,計測位置に取り付けたターゲッットを,4台のCCDカメラで同時に測定し,各計測位置を3次元座標で表示するものである.

図2 計測装置の配置

 

 

写真2 計測状況

 

仮組立シミユレーションのシステムでは,部材計測により3次元表示された各部材を,規定形状のキャンバーライン上にバッチ処理で配置し調整する.さらに,管理目標値を越える部位があれば対話形式などで部分調整を行う.

以上のシミユレーション結果を基に,連結板のボルト孔位置を決定し,NC孔明け機で連結板加工を行っている.これにより,各部材に多少のバラツキが生じたとしても,シミュレーション後に連結板のボルト孔位置を決定するので(後孔工法),連結板により各部材の誤差を吸収することとなり,全体形状の精度を確保することができる.

 

3.拡大孔の適用

シミユレーション仮組立を適用した場合,拡大孔を採用しても良いこととしている.現在,拡大孔を適用している箇所としては,箱桁の縦リブなど2次部材の一部で使用されているのみである.そこで,当研究会の施工部会では,拡大孔の適用に向けた研究を実施中である.

 

参考文献)

1)(社)日本橋梁建設協会:仮組立検査省略,虹橋第60号,pp24〜33,1999

2)利守尚久,仁川弘幸,高橋宣男:数値仮組立システム,サクラダ技報第10号,pp5〜11,1998.3