疲労設計

 


 

1.はじめに

鋼道路橋においては,設計応力に占める活荷重応力の割合が小さく,また活荷重はまれにしか作用しないレベルに設定していることから,鋼床版を除いて一般には活荷重による疲労の影響を考慮しなくてもよいとされてきた.しかし,既設橋において,車両の大型化・悪質な過積載車の横行や交通量の増加,供用年数の増加に伴い,1980年頃から疲労損傷事例が主要部材と二次部材の溶接接合部や主要部材でも特殊構造部位などに疲労損傷の発生が報告されている.

 

2.鋼道路橋における主な疲労損傷事例1)

これまでに報告されている疲労損傷事例を示すと下記の個所に分類される

(1) プレートガーダーでは,枝桁・対傾構・横桁と主桁との接合部,桁端の切欠き部,ソ一ルプレート溶接  部,などにき裂の発生が見られる.

(2) アーチ,トラス橋では,補剛桁あるいはトラス弦材と横桁との接合部,縦桁と横桁(床桁)の接合部やアー チ橋の垂直材上下端の接合部にき裂の発生が見られる.

(3) 床版では,輪荷重の走行位置直下の溶接部(垂直補剛材とデッキプレートとの溶接部,横リブと縦リブの交差部など)にき裂の発生が見られる.

 

3.疲労損傷の原因

疲労損傷の原因は,直接的には応力の集中と繰り返しであるが,損傷を生じやすくする誘因は以下のようにいろいろな段階に存在する.

(1) 設計時のモデル化と実構造との違いによる二次応力の発生,不適切な構造ディテールの採用による応力集中,極端な軽量化による剛性不足.

(2) 溶接欠陥は疲労強度を低下させる最大の要因.不適切な鋼材.溶接材料の使用や溶接施工は,溶接割れなどの欠陥を生じやすくする.

(3) 大型車輌の増大,とくに過積載車輌の存在は著しく疲労寿命を短くする.

(4) 不十分な維持管理による部材の腐食,支承部の腐食や磨耗による機能不全.

 

4.疲労設計の考え方2)

鋼道路橋に対する疲労設計の基本的な考え方は以下のようである.

(1) 過去に疲労損傷の生じた構造詳細については,損傷事例や補強事例を反映し細部構造の改善を行う.

(2) 主要部材の継手として疲労強度の低い継手,溶接部の品質管理・品質保証が難しい継手を極力排除する.また,疲労強度の不明な新しい継手を採用する場合には,溶接残留応力などの内部応力の影轡を含め実橋の応力状態を再現しうる大型供試体による疲労試験を実施し,その強度を確認する.

(3) 上記(1),(2)を行った上で,一次応力に支配される主要部材中の継手に関しては,交通車両の走行により生じる応力変動と疲労試験から求まる疲労強度を用いて疲労照査を実施する.また,疲労設計の前提条件として,以下のような項目が考えられる.

(4) 製作・架設においては,設計で想定した継手の疲労強度を確保しうる品質管理を実施する.

(5) 製作,架設時に補強材や吊金具などを設置する場合は,設計で想定していないような継手を使用しない,あるいは完成後も残置される部材の継手部に対しては,疲労設計を実施する.

(6) 供用後における付属物の設置,各種の補修・補強においても設置部材の継手部に対して疲労設計を実施する.

一般に,疲労設計と言うと(3)における部材中の各種継手を対象とした疲労照査(応力度照査)をイメージするが疲労設計の基本は(1),(2)であると行っても過言ではない.

過去における疲労損傷の多くは,通常の設計では計算対象外の部位に二次的な応力集中が原因で生じている.まずはこれらの損傷に配慮した構造詳細を採用することが重要であり,このことが疲労設計の第一歩と言える.

製作時における溶接部の品質保証は疲労設計では必要不可欠の要因である.継手の強度等級に応じた許容欠陥の設定とそれを保証する溶接施工および品質検査がなされて初めて疲労設計が成り立つといえる.また,設計段階では考慮していなかった吊金具や各種補強材を製作および架設段階で設置することがあるが,疲労の観点からは,このような部材の接合も本体構造物の接合と同等であり,疲労設計の対象となる.さらに,供用後における各種付属物の添加や補修・補強においても同様である.

 

(参考文献)

1.     社団法人 日本道路協会 : 鋼橋の疲労  平成9年5月

2.     (社)日本鋼構造協会編 : 鋼構造物の疲労設計指針・同解説 技報堂  1993.3

3.     名取 暢 鋼道路橋の疲労設計―疲労設計の導入による設計・構造イメージの変化― 第2回鋼構造と橋に関するシンポジウム論文報告集 (社)土木学会  1999.8.31