暑いとき、涼しさをもたらしてくれる貴重な風。
でも風が強いと、ものがとばされたり、歩きにくいこともあるよね。
それがものすごく強い風となると「鋼橋」にとっても大変、事故につながる可能性もあるんだ。
「風」に対する対策はどうなっているんだろう?

 風から鋼橋を守る

建物と風の問題は、地震、土砂崩れ、津波などとともに厳しい自然環境が人間の社会生活に大きな被害をもたらす恐れのある諸問題の一つです。特に、台風の通り道に位置する我が国では、橋を含む建物の建設において風の影響を無視することはできません。

 風による被害・事故

風による被害・事故は、規模の大きいものから小さいものまで数え切れないほどあります1,2)。例えば、台風、ハリケーン、竜巻の来襲により、家・建物の破損、看板などの飛散、電柱・送電鉄塔の倒壊、樹林・果樹・農作物の倒壊、自動車・列車、ときには飛行機の横転、船の転覆など、多大の被害・事故がもたらされています。この他にも、大きな事故・被害には至らないものの、台風などの強風ではなく比較的弱い風によって、不都合な振動が発生したり、ビル風が吹いたり、ピューピューという風切り音が発生し騒音になるなどの例が、橋、高いビル、送電線、各種の塔で認められます。これらの現象は、風と建物がお互いに作用し合って発生し、多様で複雑です(写真1 3,4)
写真1 H型断面をもつ
物体周りの風の流れ
(a)静止時 3)
(b)ねじれ振動時 4)
(a)
(b)

実際に起こった風による橋の被害は、1879年のテイ橋(全長3kmの鉄道橋(箱桁),英国)の落橋や、1940年のタコマ・ナロウズ橋(中央径間853mの吊橋,米国)の落橋(写真25)といった歴史的な事例から、斜張橋ケーブルや照明柱の振動に至るまでいろいろあります。このような被害・事故を繰り返さないため、関連する分野で研究が進められ、現在では風に対して安全で快適な橋を作るための設計方法が確立されつつあります。 風により橋に発生する問題としてたわみや振動がありますが、以下、その対策としてよく使わる方法を示します。

写真2 風によるタコマ・ナロウズ吊橋の落橋 5)

 風の流れを変える方法

橋桁や吊橋の塔、斜張橋ケーブルの形を工夫して、周りの風の流れ方を変化させ、風の力を小さくしたり、振動が起こらないようにします(図1 6)参照)
図1 橋桁の形を工夫した例 4)
 橋の性質を変える方法

1.振動を抑える能力を向上させる
橋桁や塔、斜張橋のケーブルに、振動を抑える装置(写真3 7)を取り付け、振動が大きくならなようにします。
写真3 吊橋主塔の振動を抑える装置(明石海峡大橋) 8)
2曲がりにくくする
橋桁などにおいて断面を構成する鋼材の厚さを増やしたり、斜張橋のケーブルをワイヤーロープなどのつなぎ材でつなぎ合わせたりして、曲がりにくくし、風によるたわみ量 を小さくします。また、曲がりにくくすることで、橋桁やケーブが振動する周期を短くすることができます。振動する周期が短い程、速い風(強風)で振動が起こるので、いつも吹いているような遅い風(弱風)では振動が起こらないようにすることができます。

【参考文献】 1)岡内 功・伊藤 學・宮田 利雄:耐風構造,丸善,1997. 2)石崎溌雄:耐風工学,朝倉書店,1997. 3)九州工業大学 久保喜延教授提供 4)中村泰治:Bluff-body Flutter,Frisbee(Video),九州大学応用力学研究所,1992. 注)3),4)は、日本鋼構造協会:構造物の耐風工学,東京電機大学出版局,pp.8,1997.に掲載。 5)Farquhason, F.B. et al.:Aerodynamic Stability of Suspension Bridges with special reference to Tacoma Narrows Bridge, Bull. Univ. of Washington Eng暖. Exp. Station, Part T,1949. 6)日本鋼構造協会:構造物の耐風工学,東京電機大学出版局,pp.23,1997. 7)日本鋼構造協会:構造物の耐風工学,東京電機大学出版局,pp.19,1997.